七野一輝、車いす卓球のスケールを超えた豪球でV!第17回全日本パラ卓球選手権クラス4で、2連覇達成
2025年10月03日

現在、車いす卓球のクラス4世界ランキング1位で、パリパラリンピック日本代表の七野一輝(オカムラ)が、第17回全日本パラ卓球選手権(肢体の部・9月26〜28日/東京・赤羽体育館)の車いす男子シングルスクラス4において優勝。同クラスにおいて2連覇を達成し、自身通算6度目の優勝を飾った。

「全日本パラは自分にとってプレッシャーだらけで、まず国内では『負けたくない、負けちゃいけない』という気持ちがあります。さらに、昨年も優勝していて第1シードでしたし、世界ランキングが1位ということもあり、そういった重圧はすごく感じながらやっていました」(七野)
一般企業に勤めながら、週に4・5回、1回につき3時間程度の練習をこなしている七野。国内ではやや守備的なプレーをする選手が多い中、車いす卓球のイメージを変えるほどの豪快なフォアハンドの一発強打を主体とした、攻撃的なプレーが彼の持ち味だ。
「もともと私は立位でプレーしていた(立位のクラス6で過去に全日本パラ3連覇)のですが、杖1本で体を支えている状態だったので、ラリーが続いてしまうとすごく不利だった。だから、リスクを冒してでも一か八かで打って決めにいき、決まったらラッキーだし、決まらなかったらそれはそれでしょうがない、みたいなスタイルでした。その感覚が残っているのだと思います」

今年新調し、以前よりも安定感が増したという競技用車いすもうまく活用。上半身を倒したり、横へ大きく動いたりと、ダイナミックなボディーワークでボールを打つことができるようになったため、プレーの自由度が上がり、戦術の幅が広がったという。
そして、何より大きかったのは今大会もベンチに入った山岸護コーチの存在だ。
「山岸コーチは、もともとクラブチームで一緒にやっていた仲間です。彼は私より年がひとつ下で、高校卒業後はトレーナーになるために専門学校へ行きました。私が日本代表として戦績を残す前に、山岸コーチ自身もトレーナーになりたての頃、本当に二人ともゼロの状態から一緒にやってきた。彼がいなかったら絶対にここまで来れなかったとハッキリ言えるくらい、すごく感謝しています」

今後の目標について、七野は次のように語ってくれた。
「パリパラリンピックでメダルが取れなかったので、もちろん2028年のロスを見据えてはいます。ただ、今年から国際大会では車いすのクラス4・5が統合されて試合が行われたりもしているので、あまり先のことを考えすぎないようにしています。(※数字が小さいほうが障害の程度は重いため、クラス4の七野にとっては条件が不利になる)
まずは目の前の一試合一試合。世界にはまだ対戦したことのないトップ選手がたくさんいますし、クラス4と5で海外も含めると戦い方が本当に変わってくるので、しっかりそこに対応できるよう練習に臨んでいます。国際大会のレベルは格段に上がっているので、一つひとつ目の前の試合で勝っていくことを目標にしたい。
まずは来年(2026年)、世界選手権とアジアパラ競技大会があるので、その2つの大会でメダルを取る。それが、直近の目標として掲げていることですね」

立位プレーヤーだった頃、2021年の東京パラリンピック世界最終予選の決勝で敗れ、代表を逃した。22年春には股関節付近が肉離れを起こし、そこから車いす卓球に転向した。車いす転向からわずか2年で出場権を獲得したパリパラリンピックでは、準々決勝で惜敗し、メダルにはわずかに手が届かなかった。
数々の試練と悔しさを経験しながら、七野はなお、高みに向かって進んでいる。いつか彼の手が世界のビッグタイトルをつかむ日が来ることを願っている。
【七野一輝選手使用用具】
ラケット:アコースティックカーボンインナーG-REVISION FL

フォア面ラバー:ハモンドZ2 特注 MAX

バック面ラバー:ピンプルスライド 中
